酒場~META MALT'S~

第6回 ~おたより紹介④ おたよりの旋律 ~



手抜きマスター:
ふむ。


アカペーン:
うむ。


手抜きマスター:
俺の名は手抜きマスター。そしてお前はアカペーン。
ここはBar META MALT'S。これは第6回の酒場である。


アカペーン:
なるほど。


手抜きマスター:
ということで、早速おたより紹介を始めていこうと思う。


アカペーン:
展開が早いな。
おたよりが、来ているのか。


手抜きマスター:
今夜は計4通のおたよりを紹介しようと思う。


アカペーン:
今は夜なのか。夜か。


手抜きマスター:
夜だよ。夜以外のなにものでもない。
お前、時間の間隔大丈夫か。外出てるか。
見当識障害か。


アカペーン:
見当識障害ではない。いや、いきなり「今夜」というワードが出てきたから、今が夜であるという認識を読者の皆様に明確にさせたのだ。


手抜きマスター:
うるさい。くどいぞ。
まあ、おたより紹介に進もうか。


アカペーン:
ひ、ひどいな。
そこまで言わなくても……。




おたよりNo.11
なんでメニューにアカペーンか描かれているの?

               







手抜きマスター:
なんでだ。


アカペーン:
いや、知らないぞ。
俺はメニューをただ読んでいただけだ。


手抜きマスター:
いや、メニュー上に明確にアカペーンが存在しているじゃないか。


アカペーン:
俺はただそこに存在しているだけだ。


手抜きマスター:
アカペーンが文字に被さっているな。
メニュー隠しにきてるな。
邪魔だ。


アカペーン:
俺はここに立って、メニューを読んでいるだけだ。


手抜きマスター:
ちょっと離れろ。


アカペーン:
はい。








手抜きマスター:
いや、だから邪魔だって。
なんか右下にチラ映りしてるじゃないか。チラリズムか。


アカペーン:
メニューから少し離れた場所に立って、メニューを読んでいる。


手抜きマスター:
もうお前メニュー読むなよ。
一回読んでるだろ。


アカペーン:
つーかこれ、俺がいなくても、
メニューのカクテル名が入りきってない気がするんだが。
なんだ「ギムレ」って。


手抜きマスター:
「ギムレット」って書こうとして、
枠に収まりきらなかった。


アカペーン:
駄目じゃん。なんだよ「ギムレ」って。
ちゃんと書けよ。


手抜きマスター:
ジンとライムジュースを混ぜて作る。


アカペーン:
いや、聞いてないよ。


手抜きマスター:
つーかお前、お前がメニューにいると、
完全にメニューと同化してしまう問題が発生する。
それはお前が二次元だからだ。


アカペーン:
仕方ないだろう。


手抜きマスター:
お前がメニューから離れてメニューをチラ視している図なんか、
完全にメニューに付着した血痕と化してるじゃないか。
不穏すぎるだろう。やめろ。


手抜きマスター:
ここはそういう酒場じゃない。


アカペーン:
どういう酒場だよ。
じゃあ俺はどうすればいいんだ。


手抜きマスター:
メニューから離れて読者の誤解を解くか、
棒立ちとは異なる方法でメニューとアカペーンが分離していることを
読者に証明させるかだな。


アカペーン:
そ、そうか。
それで「メニューとアカペーンが分離していることを
証明させる方法」とは一体なんだ。


手抜きマスター:
たとえばこんな感じだ。






アカペーン:
なんだこれは。


手抜きマスター:
今俺はメニューを読んでいるお前の後ろから、
とても強い光をあてることでお前の影を作りだしている。


アカペーン:
メニューによくわからん染みがついてるみたいになったな。
影の俺強そうだな。


手抜きマスター:
お前、自分自身の影に語りかけるとは……。
現代社会の闇か。


アカペーン:
別に語りかけてはいない。


手抜きマスター:
つーかお前、なんで棒人間なんだ。
お前が棒人間みたいだから、メニューに描かれている落書きみたいな様相になっているんじゃないか。
お前の身体を太くしよう。


アカペーン:
どういうことだ。


手抜きマスター:
こういうことだ。








アカペーン:
うおおおお


手抜きマスター:
お前の、身体の線を太くした。
ムッキムキの肉体になったな。


アカペーン:
いやムキムキじゃないだろうこれは!キモいだけだろ!!
メニューとの同化がどうとか以前に、なんだかよく分かんないぞ!


手抜きマスター:
お前、やっと自分自身の気持ち悪さを自覚したのか。
俺は嬉しいぞ。


アカペーン:
なんだと


手抜きマスター:
同化がどうとかって、ダジャレか。


アカペーン:
いやダジャレじゃない。


手抜きマスター:
これでお前の影を作ると、
お前の影もムッキムキになるな。







アカペーン:
強そうな影だ!


手抜きマスター:
いやごめん、なんだかよく分からなくなってしまったな。
次のおたよりに移るか。


アカペーン:
投げっぱなしか!





おたよりNo.12
 元気になりたい



手抜きマスター:
元気か。元気ほしいよな。


アカペーン:
さっきのおたより紹介、アレでよかったのか?
全体的に意味分からんぞ。


手抜きマスター:
自分でもどうしたらいいのか分からなくなってしまい、
次のおたよりに移ることにした。


アカペーン:
元気は俺もほしいな。
なにか、「癒しの時間」がほしい。


手抜きマスター:
切り替えが早いな。
お前はいつも元気だろう。
元気すぎてうっとうしいくらいだ。


アカペーン:
いや今の俺には元気がない。
全身が悲鳴をあげている。
朝起きるのがしんどい。


手抜きマスター:
朝起きるのがしんどいのは、お前が夜更かししてるからだろう。
全身が悲鳴という以前にお前の身体は棒だろう。
クソニートめ。


アカペーン:
クソニートという突然の暴言に静かな怒りが沸き立つが、
健康な身体が必要だな。


手抜きマスター:
運動しろよ。


アカペーン:
いい運動方法が思いつかない。


手抜きマスター:
自分で探せよ。なんかスポーツをしろ。
自分から動いて、身体で学び、
発展的成長を日々の鍛錬の中で見出すことが人間の人間たる使命だ。


アカペーン:
できたらスポーツ以外の方法で、
何か元気になれるものが欲しい。


手抜きマスター:
いや運動しろよ。体力作れよ。
これだからクソニートは……。
えだまめモンスターくんを呼ぼう。


えだまめモンスター:
マスター。呼びましたか?


手抜きマスター:
君はすぐに駆けつけてくれるな。頼もしい限りだ。
えだまめモンスターくん、あの運動をしたがらないクソ横着ニートのアカペーンくんのために、何か元気になれるえだまめ料理を振る舞ってくれ。


えだまめモンスター:
わかりました。






ゴオオオ……





ジャーーーン



アカペーン:
豆腐じゃないか。
前にも食べたぞ。


えだまめモンスター:
ご、ごめんなさい。
何を作ればいいのか分からなかったので・・・・・。


手抜きマスター:
豆腐の中に含まれている「トリプトファン」というアミノ酸は、
脳内でセロトニンやノルアドレナリンの材料になる。
これはうつ病に効果てきめんであると聞く。


手抜きマスター:
気分の落ち込みには豆腐を食べるのだ。豆腐は人々に元気をもたらす良い食材であると言うことができるだろう。
そこに枝豆が付加されることにより、人々は枝豆の味を楽しみながら豆腐を食うことができる。


アカペーン:
豆腐、すごいな。
えだまめモンスターさん、ナイスだ。


えだまめモンスター:
ありがとうございます。


アカペーン:
豆腐もえだまめも食えない人は、
一体どうしたらいいんだ。


手抜きマスター:
豆腐じゃなくても、大豆系食品にはだいたいトリプトファンが含まれていると思う。納豆とか。


アカペーン:
納豆はネバネバしてて臭いからな。
食えない人もいるだろう。その時は?


手抜きマスター:
バナナにも、豊富なトリプトファンが含まれている。
一時期「朝バナナダイエット」というのが流行っていたことがあったんだが、まあダイエットじゃなくても朝にバナナを食うのはいいことだろう。


アカペーン:
バナナ、甘いし、ネバネバしてるからな。あと腐りかけてる時の黒い部分(シュガースポット)が、特に甘くて、あれを食うとウエッてなる。





(皮の黒い所に、シュガースポットが点在する)


アカペーン:
バナナも豆腐も納豆も食えない人は、一体どうしたら?


手抜きマスター:
知らねーよ。プロテインでも飲んでろ。
あと運動しろ。健康な肉体を作れ。
毎日、筋トレだ。


アカペーン:
は、はい。


手抜きマスター:
次のおたよりに移ろうか。


えだまめモンスター:
それでは、次のおたよりです。





おたよりNo.13
 この酒場を訪れるときにかけるBGMをチョイスしてくれ

                   P.N ( 著作権三 )







手抜きマスター:
それでは、次のおたよりに移ろうか。


アカペーン:
おい!!
なんだ、いまの!


手抜きマスター:
ミセス・ロビンソンの「TOKYO GO」は、
ディスコでズンチャズンチャする時に流れる音楽だ。
どうだ、ノリノリになれるだろう。ジュリアナ東京だ。


アカペーン:
いや、わかんねーよ。
ディスコでズンチャズンチャってなんだ。ジュリアナ東京ってなんだ。
ここはディスコなのか。


手抜きマスター:
ジュリアナ東京。実は俺も行ったことがないから分からない。


アカペーン:
もっと分かり易いので頼む。


手抜きマスター:
分かり易いのか。そうだな。
酒場のBGM……やっぱりジャズとかだろうか。


アカペーン:
まあ酒場といえばやっぱりジャズだろうな。
しかし、P.Nの「著作権三」というのが、少し気にかかるな。
ちょさく・けんぞうか。


手抜きマスター:
ちょさく・ごんぞうじゃないのか。


アカペーン:
なんでもいいけど、誰でも知ってるナイスな音楽を頼む。


手抜きマスター:
そうだな。






アカペーン:
これは?


手抜きマスター:
アメリカのジャズ・ピアニスト、
ハービー・ハンコックの名曲「処女航海」だ。


アカペーン:
誰でも知ってるものではないだろう。
俺が思ってたのと違う。


手抜きマスター:
まあでもジャズの中だとそれなりに有名な部類だし。
お前の思考はしらん。


アカペーン:
いやマスター、「誰でも知ってるのを頼む」と言われたら、もうちょっと誰でも知ってる部類の音楽を出すだろう。ラブマシーンとか。


手抜きマスター:
なんでラブマシーンなんだよ。モーニング娘。か。
つーかラブマシーンも今の世代の人はあまり知らないだろう。
相当古いぞ。
なんで酒場で「ラブマシーン」なんだよ。




えだまめモンスター:
フーフー


手抜きマスター:
「誰でも知ってる部類の音楽」で「ラブマシーン」が出てくるあたり、アカペーンくんにはなんかそういう特有のアレがあるな。
だいたい、誰でも知ってるて言ったって、真に全員が納得できる「誰でも知ってる」はなかなか実現しないものだ。


アカペーン:
なんかそういう特有のアレってなんだよ。
まあ「誰でも知ってる」ってだけなら、まだ他にも色々探せるな。
君が代とか。おもちゃのチャチャチャとか。


手抜きマスター:
お前、テキトーすぎんだろ。なんで国歌と動揺なんだ。
大体、それも日本人以外にはわからんだろう。


アカペーン:
「動揺」じゃなくて「童謡」な。


手抜きマスター:
とにかく、この酒場に相応しいジャズやそういう類の音楽でないと、
俺は納得できない。


アカペーン:
最初に酒場をディスコにしたのはマスターの方だろう。
ジャズやそういう類って、アバウトすぎるな。


手抜きマスター:
クラシックでも、いいかもしれん。






手抜きマスター:
クラシックだ。


アカペーン:
これはあれか、ホルストの組曲『惑星』の「木星」のやつだな。
たまにテレビとかでかかるな。


手抜きマスター:
お前よく知ってるな。
ちょっとというかもう結構かなり古いぞ。


アカペーン:
こんな感動的な楽曲に、こんなクソ自堕落な酒場は不釣り合いだろう。


手抜きマスター:
クソ自堕落なのはお前だけだ。
あとはスーザン・ボイルだな。





(1:05~ 『夢やぶれて』)

アカペーン:
感動的なやつはやめろ。


手抜きマスター:
感動の心を失った哀れな子羊め……


アカペーン:
いや俺は哀れな子羊じゃないし、感動の心を失ったわけでもない。そうじゃなくて、この酒場でやるなと言いたいんだ。
感動をネタにするな。感動が奪われている。


手抜きマスター:
お前はでも俺がどんなジャンルの音楽を選曲しても、
何かと「違う、そうじゃない」みたいなことを言って否定に入ってくるんだろう。お前の納得できる酒場BGMは存在しない。
自分で作曲するしかないな。音楽性の違いで解散だ。


アカペーン:
解散はしなくていい。


手抜きマスター:
次のおたよりに移ろう。次でラストだ。





おたよりNo.14
 僕もこの酒場でバイトしたいです!!!

                   P.N ( 石北 海(19) )



手抜きマスター:
バイトを雇おう。


えだまめモンスター:
はい。


手抜きマスター:
新入りがくるぞ。えだまめくん。
もう一人じゃないぞ。


えだまめモンスター:
本当ですか。嬉しいです。


アカペーン:
どうやって石北さんを呼ぶんだ。
ここには二次元と三次元の超えられない壁がある。


手抜きマスター:
お前はうるさい。少し黙ってろ。


アカペーン:
今更だけど、今日のマスターは冷たいな……いや、いつもか。


手抜きマスター:
石北さんを俺たちの次元に引き込むんでなくて、
この酒場を三次元へ引き出せばいいんじゃないか。
概念になろう。


アカペーン:
なんだそれ。


手抜きマスター:
俺たちが実写になることはできないので、実体のない概念だけの存在になって、三次元の世界を生きていくんだ。


アカペーン:
なんで実写になれないんだ。


手抜きマスター:
いや俺やえだまめくんは三次元になることができるかもしれんが、
お前は棒人間だろう。お前は二次元だろ。
筋肉をつけろ。


アカペーン:
人間として生まれ変わろう。


手抜きマスター:
なんかちょっとメタ的な発言だな。まあMETA MALT'Sだしな。
というか、実体のない存在になったらこうしておたよりを読むこともできなくなるな。うん、概念になるのはやめよう。


えだまめモンスター:
アカペーンさんがこの酒場のバイトとして入ればいいのでは?


手抜きマスター:
それはもう今更諦めてる。
こいつには勤労の意志がない。
一度バイトとして入ったことがあったが、
役に立たないので辞めさせた。


えだまめモンスター:
あったんですか。


手抜きマスター:
聞いたオーダーを微妙に間違えて出したりするんだ。
あといつのまにか勝手に席に座ってる。気がついたら水を飲んでる。


アカペーン:
俺には水分補給が欠かせないからな。
おい、この話はやめろ。


えだまめモンスター:
そうですか・・・・・・。






手抜きマスター:
……というわけで、今日のおたより紹介は以上だ。


アカペーン:
色々なおたよりがあったな。ありがとうございます。


手抜きマスター:
うむ。


えだまめモンスター:
マスター、あたらしいバイトさんを雇ってください。
寂しいです。


手抜きマスター:
確かに俺とえだまめくんだけでこの店を回すのはそろそろきついかもしれんな。しかしアカペーンはアカペーンだしな……。
ちょっと、検討してみます。


アカペーン:
俺は俺だ。
今更だが、サブタイトルの「おたよりの旋律」って何だ。


手抜きマスター:
スーザン・ボイルだ。


アカペーン:
そうか。


手抜きマスター:
適当な反応だな。まあ、いいや。
それでは、また次回。







~おわり~


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