リリムの葬列
































































彼女はとにかくお腹が空いていた。
彼女の意志が黒い雲の舌を操ると、
黒い雲は宇宙空間に浮かぶ様々な塵、ガス、隕石、ゴミや微生物を、
その巨大な舌で絡め取って飲み込んだ。
時には自分の身体よりも巨大な星でさえも飲み込んだし、
彼女がその気になれば太陽のような
熱い熱い恒星も飲み込むことが出来た。








彼女の空腹は留まるところを知らなかった。
彼女はとにかく目一杯に宇宙の星々を飲み込んでいったのだ。
もし我々の見ている星空が、だんだん暗くか細く小さくなっていくような気がしたら、
それは彼女の仕業だと思っていい。











































































































































































宮沢賢治:よだかの星(青空文庫)



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